贋札に憑かれる

mahora

2008年01月29日 16:37

アニメーションディレクターから作家に転身し、数々の文芸賞を受賞している真保裕一。
メジャーな作品としては、映画化された「ホワイトアウト」が有名です。

偽札作りに執念を燃やす一人の青年の成長と、ヤクザとの息詰まる死闘を描き、山本周五郎賞・日本推理作家協会賞を受賞した「奪取・上下巻」(講談社文庫)。

完璧な偽札は本物を超える…と、まるで憑き物に取りつかれたように、贋札作りの頂点を目指す主人公たち…

もちろん、偽札つくりは国家経済の基幹を覆す大犯罪に違いないが、章を追うごとにそのテクニックが向上し、激しい情熱と探究心に、悪い事とは判りつつ、つい、声援を送りたくなってしまう。

ユーモア・アクション・友情・人間の業と欲を散りばめ、軽快でリズミカルな物語の展開で、読者をグイグイ惹きつけます。
結末は大ドンデン返しですが、カラッと晴れた青空のような爽やかさです。