2009年04月30日

道を拓き、示す者たち

村上龍「無趣味のすすめ」幻冬舎。
時代を走り続け、常に第一線で活躍している作家の箴言集。
大きな文字、広い地の余白、書籍用紙にしては白過ぎる紙。
んっ?何でだ?

趣味は老人のものであると断言している著者は、既得権益に守られ、心地よいコミュニティから抜け出そうとしない、老人に向けているのだろうか?
それとも、希望を見失い、絶望することにすら気力をなくしている、活字離れ著しい若者に向けているのだろうか?

小説の執筆は実に憂鬱で地道な作業である…と著者はいう。

偏執狂のように、余分な文章をそぎ落とし、足りないシーンや文や言葉を書き足していくという、地味といえばこれほど地味なものはない、ということをえんえんと繰り返すのが「小説の執筆」だ。
その結果、文章全体の正確さがあるレベルに達すると、物語の力を増幅させて、読者にある種の依存を生じさせるような「強制力」を獲得することができる。
うまい文章、華麗な文章、品のある文章、そんなものはない。
正確で簡潔な文章という理想があるだけだ。
ビジネスにおける文章より

一日の終わり…枕元へ置いて読んでみるにはお薦めします。


  


Posted by mahora at 14:34Comments(0)

2009年04月15日

三本立て!

花散らしの大雨の夜の例会は、黒沢清監督の「トウキョウソナタ
原案の脚本を書いたのはオーストラリア人で、オランダの製作・セールス会社が参加したりと、ずいぶん多国籍なんだけど、内容は現代日本のごく普通の家庭の崩壊と再生を描いていています。

尤も今の日本社会では、この普通と言うことばの持つ意味と、普通の基準って、すごくあやふやで怖いですね。

リストラされたことを家族に言えないお父さん。
ドーナツを作っても食べてもらえないお母さん。
アメリカ軍に入隊するお兄ちゃん。
そして、こっそりピアノを習っている小学六年生のボク…

一家そろって食卓を囲み、家族としての体裁は繕うけど、それぞれが秘密を抱え、すでに心と気持ちはバラバラ…
観ていても息苦しいほどの食事風景なんだけど、お母さん役の小泉今日子がうまいっ!

やがて鬱積した気持ちがぶつかり合い衝突し、それぞれが自分の内面と向き合い、決着をつけなければならない時が訪れる。
そして、何か憑かれたように、お父さんもお母さんもボクも、バラバラの家に向かって一目散に走る! 走る! 走る!

ラストでボクが弾く「月の光」が、家族も観客の心もみんなひっくるめて持って行ってしまう…
雨上がりの晴天のような、心地よい余韻を残す映画です。

先月の例会の「僕らのミライへの逆回転」は、ちょっと馴染めない映画だった。
会員へのアンケートでも、評価は真っ二つでした。

先日観た「マンマ・ミーア!」は女性には文句なくお勧めします!
美しい映像! 洗練された楽曲!
鍛えられたダンスと歌!
快感物質大放出! 間違いなしです!


  


Posted by mahora at 14:26Comments(0)