2007年11月01日

迫力のリアリティ!

田中森一著「反転・闇社会の守護神と呼ばれて」(幻冬舎)
★5つ超でお勧めします!

理屈ぬきの迫力の筆致に、次々と活字を追って一気に読ませます。

長崎県平戸の貧しい漁村に生まれ、極貧の少年時代を送った筆者・田中森一は苦学(すっかり死語)して、岡山大学法文学部に進み、在学中に司法試験に合格する。

検察庁に入り、現場たたき上げの鬼検事として、多くの疑獄事件を立件し、特捜のエースとなるも、権力組織の限界を感じ、弁護士に転ずる。

そして、バブル経済の真っ只中で、多くの闇社会の人間たちの弁護人となり、見たこともないような高額な報酬を手にし、検察と相対する。
その方法は、法曹界に身を置く人間とは思えないような、あの手この手で法の網をかいくぐり、まるで、古巣の検察に復讐するかのような辣腕ぶりで、被告人がヤクザだろうが、仕手筋の人間だろうが、読んでいて痛快にすらなってくる。

多くの政治家・経済界要人・芸能人などが実名で出て、アングラマネーにたかった者、そのおこぼれにあずかろうとした者など、金を目の当たりにした人間の、本性や性が実にリアルに表現されていて飽きさせない。

検事や弁護士などはロジカルシンキングの代表的職業で、立件の取り調べも理詰めで攻めまくると思いきや、嫉妬、僻み、怒り、悲しみなどの人間的感情が露わになる。
腹を据えての、被告人との真剣ガチンコ勝負はド迫力です。

貧しい生い立ちと、そこから這い上がろうと苦労した人間・田中森一の温かさと優しさは、反面、弱さだったのかも知れない。
そして、この優しさと弱さゆえに、自身が被告人と言う立場に落ちてしまったような気がする。

正義って何だ? 真実はどこにあるんだ? と言うことを考えるには是非読んで欲しい一冊です。
  


Posted by mahora at 17:34Comments(0)