2008年03月27日

自己実現最大の敵!

阿部絢子やさしくて小さな暮らし」を自分でつくる―ヨーロッパ流エコライフ (家の光協会
消費者問題に詳しい作者が、エコ先進地のヨーロッパ各国で、一般家庭にホームステイし、そこから学んだ質素な無駄のない、それでいて豊かな暮らしぶりのレポートです。

歴史や文化、気候風土も異なる国の消費スタイルを、極東アジアの高温多湿で、1億人がひしめく小さな島国に、そっくり当てはめるにはムリがあるけど、学ぶこと、実践できることはかなりあると思った。
…と言うか、以前の日本では当たり前に行ってきたことばかりです。

不要な衣類はほどき、洗い直し、仕立て直し、最後まで使い切る。
食器は無害の洗剤でサッと洗い、すすがず、布巾で拭いて終わり。
エエ~ッ!って思うけど、日本でも米のとぎ汁で食器を洗い、そのまま乾かし使っていた。
家は少しずつ時間をかけて手創りし、どんな家庭でも家具類は必ずリサイクル品を使う。

モノに対する愛着と、手間ひまかけたていねいなライフスタイルは、おしゃれで洗練されたヨーロピアンスタイルとはかけ離れた、実に質素で始末な暮らしで、消費することでしか、経済成長しない日本とは大違いです。

昨日の毎日新聞に仏文学者の鹿島茂が、幼児虐待・育児放棄がなくならない原因は、資本主義の異常発達にある、書いていた。
消費スタイルという点で、共通するものがあり、とても興味深く読んだ。
以下、一部引用視します。

資本主義の本質とは、より多くの商品を消費者に買ってもらうことである。
だが、商品の購入が「必要」に基づく限り、販売数は人口を超えて増えることはありえない。

そこで、資本主義が考えだしたのは、自己実現としての消費というアイデアである。
つまり、消費者が自分の価値を他人(あるいはもう一人の自分)に認めさせようとした時、商品を買うしか方法がない(モノを買うことが幸せの根源と説くテレビ・新聞・雑誌の広告など)よう思い込ませることができれば、資本主義は「必要」の枠を超えて拡大できるのである。

だが、消費者が自己実現としての消費を行うには、金を稼ぐこともさることながら、そのための時間もまた作り出さなければならない。
ようするに「面倒くさい」ことを極力省力化しない限り、消費に全エネルギーを傾けることはできないのである。
そして、この面倒くさいことの筆頭が育児である。
ゆえに、自己実現としての消費が進めば進むほど、自己実現の最大の敵である育児は、真っ先に標的になり、ネグレストされていく。  


Posted by mahora at 10:57Comments(0)